「子どもが学校へ行けなくなったとき、親として何をすればいいのだろう」
そう悩む一方で、励まし方や声のかけ方を間違え、子どもをさらに追い詰めてしまわないか不安になる保護者も多いのではないでしょうか。
不登校でやってはいけないことは、無理に登校させる、理由を問い詰める、甘えと決めつけることだけではありません。ゲームやスマホを突然取り上げる、勉強や生活リズムを一度に立て直そうとする、「見守る」という理由で関わりを断つことも、子どもの状態によっては負担になります。
ただし、一度対応を間違えたからといって、取り返しがつかなくなるわけではありません。大切なのは、正解を急ぐことではなく、子どもの心身の状態を確かめながら、その都度関わり方を調整することです。
この記事では、不登校の子どもに対して親や先生がやってはいけないことを12項目に分け、避けたい理由、代わりにできる対応、実際の声かけ例を解説します。休ませることと放置することの違いや、ゲーム・勉強・生活リズムへの対応、学校との連携、医療機関へ相談する目安も紹介します。
今の対応に迷っている方は、できていないことを責めるのではなく、今日から変えられる一つの関わり方を見つけるためにお役立てください。
この記事の結論
不登校の子どもに対してやってはいけないのは、無理に登校させる、理由を問い詰める、甘えと決めつける、将来への不安で脅す、ゲームを突然取り上げる、勉強や生活リズムを一度に立て直そうとする、本人の同意なく支援を決める、完全に放置するといった対応です。
大切なのは、登校だけを当面のゴールにせず、心身の安全を確かめたうえで、子どもの状態に合う支援を一緒に探すことです。休養が必要な時期はありますが、休ませることは放置することではありません。家庭、学校、スクールカウンセラー、必要に応じて医療機関がつながりを保ち、学習や進路も含めて継続的に支えます。
| やってはいけない対応 | 代わりにしたい対応 |
|---|---|
| 「とにかく学校へ行きなさい」と迫る | 「今日はどう過ごすと少し楽?」と安全を優先する |
| 理由を繰り返し聞く | 「今は話せなくても大丈夫」と伝える |
| 甘え・怠けと決めつける | 困りごとや体調の変化として受け止める |
| 将来や進路を持ち出して脅す | 必要な情報を大人が整理し、選択肢を示す |
| ゲームやスマホを突然没収する | 睡眠・課金・安全を確認し、本人とルールを考える |
| 勉強と生活リズムを一度に直す | 体調、睡眠、食事から小さく整える |
| 本人に無断で面談や訪問を決める | 連絡方法や頻度を事前に相談する |
| 「見守る」と言って関わりを断つ | 短い会話と安全確認を続け、相談先ともつながる |
不登校でやってはいけないこと12選
1.無理に登校させる
泣いている子どもを車に乗せる、玄関から引っ張り出す、「行かなければゲーム禁止」と条件をつけるなど、力や罰で登校させるのは避けてください。強い腹痛、頭痛、吐き気、動悸などがあるときは、まず体調の確認が必要です。
ただし、「休ませれば何もしなくてよい」という意味ではありません。落ち着いた時間に、保健室登校、別室登校、遅刻・早退、オンラインでの学習など、負担の小さい選択肢を学校と確認します。
声かけ例
「今日は休むことにしよう。学校への連絡は私がするね。体が落ち着いたら、これからのことを一緒に考えよう」
2.「甘え」「怠け」と決めつける
家ではゲームをしたり笑ったりできるのに、学校の時間になると動けないことがあります。その様子だけで甘えと判断すると、子どもは苦しさを話しにくくなります。
不登校の背景は、友人関係、いじめ、勉強のつまずき、先生との関係、集団環境への負担、心身の病気、発達特性などさまざまです。本人にも理由をうまく説明できない場合があります。
声かけ例
「学校に行けないほどしんどいことがあるんだね。うまく説明できなくても大丈夫だよ」
「不登校は甘えなのか」を詳しく知りたい方は、不登校は甘え?行けない背景と親の対応もご覧ください。
3.理由を何度も問い詰める
「なぜ行けないの」「誰かに何かされたの」「理由くらい言って」と質問を重ねると、子どもは答えを作ったり、会話そのものを避けたりすることがあります。原因は一つとは限らず、時間がたってから言葉になることもあります。
質問は一度に一つ、答えやすい形にします。「話す」「書く」「選択肢から選ぶ」「今は答えない」のどれでもよいと伝えると、本人の負担を減らせます。
声かけ例
「今は理由が分からなくてもいいよ。話したくなったときに聞かせてね」
4.「明日だけ行く」と約束させる
夜に調子がよくても、朝になると心身の症状が強まることがあります。前日の約束を守れなかった子どもを責めると、「また失敗した」という気持ちが強くなります。
登校の約束ではなく、朝の状態を見て選べる計画にします。「登校する」「遅れて行く」「保健室だけ利用する」「休む」などを用意し、休む場合の連絡は保護者が担います。
声かけ例
「明日の朝の体調を見て決めよう。今ここで約束しなくて大丈夫」
5.将来への不安で脅す
「このままでは進学できない」「人生が終わる」「社会に出られない」といった言葉は、行動を促すよりも不安を強めることがあります。保護者が進路を心配するのは自然ですが、その不安をそのまま子どもに背負わせないことが大切です。
出席日数、内申点、学習方法、進路の選択肢は、学校ごと・地域ごとに条件が異なります。まず保護者が担任や進路担当に事実を確認し、必要な時期に短く伝えます。
声かけ例
「進路にはいくつか選択肢があるよ。今すぐ決めなくていいから、必要な情報は私も調べるね」
6.きょうだいや同級生と比べる
「弟は行けている」「友達は頑張っている」という比較は、自己肯定感を下げ、家庭を安心できない場所にしてしまう可能性があります。比較するなら他人ではなく、本人の昨日や先週との変化を見ます。
起きる時間が少し早くなった、食卓に来られた、家族と会話できたなど、小さな変化を評価しすぎず、そのまま認めます。
声かけ例
「今日は一緒にご飯を食べられたね。顔を見られてうれしかったよ」
7.ゲームやスマホを突然取り上げる
ゲームや動画、SNSが、つらい気持ちから一時的に離れる手段や、友達とのつながりになっていることがあります。一律に「不登校の原因」と決めつけて没収すると、親子の対立や孤立を深める場合があります。
一方で、昼夜逆転、課金、ネット上のトラブル、食事や睡眠への影響を放置する必要はありません。まず利用状況を把握し、禁止から入るのではなく、本人と相談して調整します。
声かけ例
「ゲームを全部やめてほしいわけではないよ。睡眠がつらそうだから、夜の使い方を一緒に考えたい」
8.勉強と生活リズムを一度に立て直す
欠席が続くと、保護者は学習の遅れや昼夜逆転を急いで直したくなります。しかし、心身が疲れているときに、早起き、運動、家事、勉強を一度に課すと負担が増します。
最初は食事、水分、睡眠、清潔、安全など生活の土台を確認します。状態が安定してきたら、本人が選んだ時間に5分だけ教材を見るなど、達成できる大きさから始めます。学習を始める時期や方法に一律の正解はありません。
声かけ例
「今日は勉強するかどうかも含めて選んでいいよ。やるなら5分だけ、一緒に考えようか」
9.本人に無断で面談・家庭訪問・支援先を決める
担任の家庭訪問、友達からの連絡、スクールカウンセラーとの面談は、助けになる場合もあれば、強いプレッシャーになる場合もあります。善意であっても、本人に知らせず進めるのは避けましょう。
「誰から」「どの方法で」「どのくらいの頻度ならよいか」を確認します。本人が学校と話せない時期は、保護者だけで面談し、内容をどこまで本人に伝えるかも相談できます。
声かけ例
「先生から連絡したいと言われたよ。電話、メッセージ、今は連絡なしのどれが一番楽?」
10.「見守る」を完全な放置にする
登校や勉強を迫らず見守ることと、会話や安全確認までやめることは違います。食事をとれているか、眠れているか、自傷や希死念慮がないかを確認し、短く穏やかな関わりを続けます。
返事を求めすぎない挨拶、食事の声かけ、好きな話題の共有など、学校と無関係な接点も大切です。子どもが一人になりたいときは、その希望を尊重しながら「困ったら声をかけて」と伝えます。
声かけ例
「今は一人でいたいんだね。夕食は18時ごろに用意するよ。困ったらいつでも呼んでね」
11.父親・母親のどちらかを原因と決めつける
「母親が甘やかしたから」「父親が厳しいから」と一人を責めても、解決にはつながりません。不登校は、子どもの特性、学校生活、友人関係、家庭、社会環境など複数の要因が関係し得ます。
「不登校になりやすい家庭」「不登校になる子の母親の特徴」といった一律の型で判断するのではなく、今の生活で何が負担になり、何を調整できるかを考えます。家庭内に強い叱責や対立があるなら、犯人探しではなく、第三者を交えて安全な関係を作り直します。
詳しくは不登校は母親のせい?原因探しより大切な対応で解説しています。
12.家庭だけで抱え込み、相談を先延ばしにする
保護者だけで原因究明、生活管理、学習、学校との交渉を担うと、親子ともに疲弊します。文部科学省は、教職員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育支援センター、医療機関などが連携し、子どもの状況に応じて支援することを求めています。
相談は「登校させるため」だけに行うものではありません。保護者自身の不安を整理し、利用できる制度や学び方を知るためにも活用できます。
「休ませる」と「放置する」の違い
文部科学省は、不登校支援について、登校という結果だけを目標にするのではなく、子どもが自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指す必要があるとしています。また、休養に積極的な意味がある場合を認める一方、学業の遅れや進路選択上の不利益などにも留意し、本人の希望を尊重した支援が重要だと示しています。
| 休ませながら支える | 放置する |
|---|---|
| 登校の圧力をいったん下げる | 子どもの状態に関心を向けない |
| 食事・睡眠・体調・安全を確認する | 心身の不調や危険なサインを見過ごす |
| 本人が受け入れられる関わりを続ける | 会話や連絡をすべて断つ |
| 学校との連絡は保護者がつなぐ | 学校との連携を完全に止める |
| 状態に応じて学習・居場所・医療を検討する | 支援先を探さず長期間そのままにする |
休養の期間や次の一歩は、年齢や症状、欠席の背景によって異なります。「何週間休めば回復する」と一律に決めず、本人の変化を見ながら調整してください。
不登校の初期に保護者ができる5つの対応
1.心身の安全を確認する
腹痛、頭痛、吐き気、不眠、食欲低下、強い不安、自傷などがないかを確認します。身体症状が続く場合は小児科などに相談し、精神的な不調が強い場合は児童精神科、精神科、心療内科などを検討します。
2.安心できる短い言葉を伝える
長い説得より、「今日は休んでいい」「味方だよ」「話せるときでいい」と短く伝えます。返事や感謝を求めないことも大切です。
3.学校への連絡役を保護者が担う
欠席連絡のたびに本人へ理由を確認させるのではなく、保護者が窓口になります。担任と連絡方法や頻度を決め、必要に応じて学年主任、養護教諭、スクールカウンセラーにも共有します。
4.変化を簡単に記録する
睡眠、食事、身体症状、会話、外出、学校からの連絡、本人が話したことを簡潔に記録します。受診や学校との面談で状況を説明しやすくなります。
5.家族以外の相談先につなぐ
本人が相談を拒む場合でも、保護者だけで相談できます。学校の相談室、自治体の教育相談、教育支援センター、医療機関、民間のカウンセリングなどから、利用しやすい窓口を選びます。
先生・学校が初期対応で避けたいこと
不登校の初期は、学校側の善意がプレッシャーになることもあります。次のような対応は、本人と保護者の意向を確認してから行ってください。
- 毎朝、登校できるか本人に電話する
- 予告なく家庭訪問する
- 同級生に迎えに行かせる
- 欠席理由を繰り返し聞く
- 「みんな待っている」「今日だけでも」と登校を迫る
- 復帰時期を先に決める
- 本人の同意なくクラス内で事情を説明する
- 登校再開だけを支援の成果にする
学校では、連絡窓口を一人に決め、頻度と手段を家庭と合意します。保健室・別室の利用、時間をずらした登校、オンライン支援、課題の量、評価や出席の扱いなど、利用できる選択肢を整理して伝えるとよいでしょう。
状態に合わせた関わり方
不登校の経過を固定的な「段階」に当てはめる必要はありません。同じ子どもでも日によって状態が変わるため、次の目安を使い分けます。
| 子どもの様子 | 優先すること | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 朝に強い症状があり動けない | 休養、体調確認、受診の検討 | 登校の説得、長い話し合い |
| 会話や食事も難しい | 安全確認、刺激を減らす、専門家への相談 | 勉強や進路の話を続ける |
| 家では落ち着いて過ごせる | 好きな活動、短い家事や外出を本人が選ぶ | 元気そうだから行けると決めつける |
| 学校や将来の話ができる | 選択肢を整理し、小さな目標を相談する | 復帰日を大人だけで決める |
| 学びたい気持ちが出てきた | 教材、オンライン学習、個別支援を比較する | 遅れを一気に取り戻させる |
小学生の家庭での過ごし方は、不登校の小学生はどう過ごす?安心できる1日の作り方と親ができるサポートも参考にしてください。
中学生の家庭での過ごし方は、不登校の中学生に何をさせる?段階別の過ごし方も参考にしてください。
すぐに医療機関や緊急窓口へ相談したいサイン
次のような様子があるときは、家庭だけで様子を見続けず、医療機関や公的な相談窓口につないでください。
- 「死にたい」「消えたい」と話す
- 自傷行為がある、または自傷をほのめかす
- 食事や水分をほとんど取れない
- 眠れない状態が続き、日常生活に大きな支障がある
- 強い興奮、暴力、混乱がある
- 頭痛、腹痛、失神などの身体症状が続く
命の危険が差し迫っている場合は119番、事件や暴力による危険がある場合は110番へ連絡してください。子ども本人や保護者が利用できる文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」は、0120-078-310です。
よくある質問
不登校の子どもは、しばらく休ませてもよいですか?
心身が疲弊している場合、休養が必要なことがあります。ただし、期間を一律に決めたり、完全に放置したりするのではなく、体調と安全を確認しながら、学校や相談先とのつながりを保ちます。本人の状態に合う学習や居場所は、落ち着いてから検討してもかまいません。
ゲームばかりしている場合、取り上げるべきですか?
突然の没収は親子の対立を強めることがあります。まず、睡眠、食事、課金、ネット上の安全にどのような影響があるかを確認してください。問題がある場合は、本人の意見も聞き、夜間だけ端末を別の場所に置くなど、実行可能なルールを一緒に考えます。
理由を話してくれないと、対応できないのでは?
最初から原因を特定できないことは珍しくありません。まず「いつ症状が強いか」「どんな場面なら安心できるか」「学校から何をされるとつらいか」など、今の負担を把握します。理由を言わせることより、安全な関係を保つことを優先します。
担任から「顔だけでも見せて」と言われました。応じるべきですか?
本人が望み、負担が少ないなら選択肢の一つです。本人が強く嫌がる場合は、保護者だけの面談、電話、メッセージ、オンライン面談など別の方法を相談してください。学校とのつながり方は一つではありません。
不登校は母親や家庭環境が原因ですか?
母親だけ、家庭だけを原因と決めることはできません。学校、友人関係、本人の特性、心身の状態、家庭や社会の環境などが複合している場合があります。原因探しで誰かを責めるより、現在の負担と調整できる環境を整理することが重要です。
勉強はいつから再開すればよいですか?
本人に学ぶ余力や希望が出てきたときに、短時間から始めます。教科書を開くことが難しければ、読書、動画、興味のあるテーマの調べものも学びになります。出席扱いや評価については学校ごとに確認が必要です。
保護者自身が限界を感じたらどうすればよいですか?
保護者だけで抱えないでください。学校の相談窓口、自治体の教育相談、医療機関、保護者の会、カウンセリングなどを利用できます。保護者が休み、相談できる状態を作ることも、子どもの安心につながります。
まとめ|正解を急ぐより、親子が安心できる関係を守る
不登校でやってはいけないことに共通するのは、大人の不安を理由に、子どもの気持ちや状態を置き去りにして結論を急ぐことです。
無理な登校、問い詰め、甘えという決めつけ、将来への脅し、ゲームの没収、勉強の強要は避けましょう。一方で、何も確認せず放置することも適切ではありません。食事、睡眠、身体症状、安全を確認し、本人が受け入れられる形で関わりを続けます。
保護者は完璧な対応をする必要はありません。言い過ぎたと感じたら、「さっきは不安で責めるように言ってしまった。ごめんね」と伝え、やり直せます。家庭だけで答えを出そうとせず、学校や専門家と役割を分けながら、子どもに合う次の一歩を探してください。
















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