「子どもが不登校になったのは、私の育て方のせいかもしれない」
「学校や家族から、親の関わり方に問題があるように言われた」
「仕事も家事も子どもの対応も重なり、もう限界に近い」
不登校が続くと、保護者は過去の子育てを何度も振り返り、自分を責めてしまいがちです。しかし、不登校は学校生活、友人や先生との関係、学習のつまずき、心身の不調、生活環境などが複雑に関係して起こります。親だけを原因と決めつけることはできません。
一方で、「親はまったく関係ない」と考える必要もありません。家庭での声かけや役割分担など、これから変えられる部分はあります。大切なのは、犯人を探すことではなく、子どもの負担を整理し、親・学校・支援者で対応を分担することです。
この記事では、「不登校は親のせいなのか」という疑問に根拠をもとに答え、親が罪悪感から具体的な支援へ進むための方法を解説します。
- 不登校は、親だけが原因で起こるものではありません。
- 親子関係や家庭環境が影響するケースはありますが、それは複数ある要因の一部です。
- 「誰のせいか」より、「どこで負担が生じ、何を調整できるか」を考える方が解決につながります。
- 親の役割は、診断や問題解決を一人で背負うことではなく、安全を守り、状態を観察し、学校や専門家につなぐことです。
- 親自身が眠れない、働けない、感情を抑えられない状態なら、子どもとは別に親の支援も必要です。
不登校は親のせいと断定できない
結論からいうと、不登校を「親のせい」と一つの原因で説明することはできません。
文部科学省は、不登校を心理的・情緒的・身体的・社会的な要因や背景によって登校しない、または登校したくてもできない状態として扱っています。さらに、令和6年度の小・中学校の不登校児童生徒は約35万4千人で過去最多となりました。同省は、不登校は取り巻く環境によってどの子どもにも起こり得るものであり、問題行動と受け取らないよう求めています。
最新の要因分析では、教師・子ども本人・保護者で、不登校のきっかけに対する認識が異なることも示されました。特に、体調不良、不安や抑うつ、睡眠などの不調は、子どもや保護者の回答と教師の把握に大きな差がありました。
つまり、親や先生が一つの理由を見つけたつもりでも、それが子どもの感じている苦しさの全体とは限りません。
参考:令和6年度の調査結果と不登校支援の考え方(文部科学省)、不登校の要因分析に関する調査研究(文部科学省)
原因探しの前に「きっかけ・背景・長期化要因」を分ける
不登校の理由は、本人にもすぐ説明できないことがあります。そこで、一つの原因を当てようとするのではなく、次の3つに分けて考えてみましょう。
| 見る視点 | 具体例 | 確認すること |
|---|---|---|
| きっかけ | クラス替え、友人とのトラブル、先生からの叱責、テスト、部活動、入学や進級 | 休み始める前に何が変わったか |
| 背景にある負担 | 不安、抑うつ、頭痛や腹痛、起立性調節障害、発達特性、学習の苦手さ、家庭の変化 | 学校以外の生活や体調にも変化があるか |
| 長期化させる要因 | 学習の遅れ、登校時の注目への恐れ、昼夜逆転、親子の衝突、支援先がない | 今、復帰や回復を難しくしているものは何か |
この整理は診断ではありません。症状が続く場合や日常生活への影響が大きい場合は、小児科、児童精神科、精神科、心療内科などに相談してください。
家庭環境が関係するケースもある
家庭内の不和、家族の病気、転居、経済的な不安、親の多忙などが子どもの負担になることはあります。また、強い叱責や過度な管理、本人の意思を聞かずに予定を決める関わりが、安心感を損なう場合もあります。
ただし、家庭に要因があることと、「親が悪い人である」ことは同じではありません。親自身も仕事、介護、子育て、健康問題を抱え、余裕を失っていることがあります。責めるのではなく、変えられる環境や関わりを一つずつ見つけることが重要です。
「親のせい」と「親にできること」は別の話
罪悪感にとらわれると、「過去のどこで間違えたのか」という答えの出ない問いを繰り返してしまいます。ここで、罪悪感と責任を分けて考えてみてください。
| 罪悪感に基づく考え | 支援につながる考え |
|---|---|
| 私は悪い親だ | 今、子どもが困っていることは何か |
| 育て方を間違えた | 家庭で変えられることは何か |
| 私が学校へ戻さなければ | 学校、医療、支援機関とどう分担するか |
| 早く元に戻さなければ | 今日の安全と生活をどう整えるか |
親の役割は、すべてを解決することではありません。まず担うのは次の4つです。
- 子どもの安全と休める環境を確保する
- 睡眠、食事、体調、気分、出来事を記録する
- 子どもの話を否定せず、必要以上に問い詰めない
- 学校や専門機関と情報を共有し、支援を分担する
診断、学校での環境調整、学習計画、進路選択まで、親一人が専門家の役割を担う必要はありません。
親の関わりを見直した方がよい5つのサイン
次に当てはまる場合は、自分を責めるためではなく、親子の負担を減らすために関わり方を調整しましょう。
1. 毎朝、登校するかを迫っている
朝の体調や気持ちを確認することは必要ですが、結論を急かすと会話そのものが負担になる場合があります。
言い換え例
「行くの、休むの?」ではなく、「今の体調は10段階でどれくらい?学校への連絡は私がしておくね」と伝えます。
2. 理由を何度も問い詰めている
本人が理由を整理できていないこともあります。「わからない」は、隠しているとは限りません。
言い換え例
「どうして行けないの?」ではなく、「今すぐ説明できなくても大丈夫。話せそうなときに聞かせて」と伝えます。
3. きょうだいや同級生と比較している
比較は自信を下げ、家庭を評価される場所にしてしまいます。できていないことではなく、本人の小さな変化を見ます。
4. 生活や勉強をすべて管理している
生活リズムや学習への支援は必要ですが、親がすべて決めると、子どもが選ぶ機会を失います。「何時に起きるべきか」を一方的に決めるより、本人と一緒に無理のない目標を一つ決めましょう。
5. 父親・母親のどちらか一人が対応を抱えている
学校への連絡、食事、通院、学習、進路調査を一人で担うと、親の疲労が限界に達します。同居する家族がいる場合は、担当を具体的に分けてください。
例:学校連絡は父親、通院は母親、夕食後の会話は交代制、進路情報の収集は週末に一緒に行う、という分け方です。
「母親のせい」と言われる場合の対処
不登校への対応が母親に偏っている家庭では、問題が起きたときも母親だけが責められやすくなります。しかし、子どもの生活は母親だけで成り立っているわけではありません。父親、学校、地域、医療や福祉を含むチームで考える問題です。
配偶者や親族から「育て方が悪かった」と言われたときは、次のように返す方法があります。
「誰か一人を原因に決めるのではなく、学校・体調・人間関係・家庭の状況を整理したい。これからの対応を一緒に分担してほしい」
学校から家庭の問題を指摘された場合も、感情的に反論するだけでなく、事実と支援策を分けて確認します。
「家庭で気になる様子は共有します。学校で把握している変化や、利用できる配慮も教えてください。家庭だけでなく、学校を含めた支援計画として整理したいです」
母親だけが原因と見なされやすい背景や、父親を含む家族の役割については、不登校の原因は母親?母親だけを責めないための考え方で詳しく解説しています。
不登校の親が今日からできる7つの対応
1. 子どもの安全を最優先にする
自傷、希死念慮、暴力、深刻ないじめ、極端な食事・睡眠の乱れがある場合は、登校や勉強より安全確保を優先します。緊急性があるときは119や110、医療機関へ相談してください。
2. 1週間の変化をメモする
睡眠、食事、頭痛や腹痛、気分、学校からの連絡、ゲームや外出の様子を簡潔に記録します。診断をつけるためではなく、本人・家庭・学校で見え方が違うときに事実を共有するためです。
3. 学校の連絡窓口を一人に決める
担任、養護教諭、学年主任、スクールカウンセラーなどから、本人が安心しやすい窓口を決めます。毎朝複数の先生から連絡が来る状態は避け、連絡頻度や方法も相談しましょう。
4. 原因を聞くより、困り事を聞く
「なぜ行けないの?」ではなく、「朝、教室、授業、休み時間のうち、どこが特につらい?」と小さく分けて尋ねます。答えたくない様子なら、その日は終えて構いません。
5. 家庭内の目標を一つに絞る
登校、勉強、生活リズム、ゲーム時間を一度に変えようとすると衝突が増えます。まずは食事を一度一緒に取る、昼までにカーテンを開けるなど、達成可能な目標を本人と決めます。
6. 学びと居場所の選択肢を調べる
在籍校の別室、校内教育支援センター、教育支援センター、フリースクール、オンライン学習などがあります。文部科学省も、学校復帰だけを目標にせず、本人の意思を尊重しながら社会的自立を目指す支援を求めています。
7. 親自身の休む時間を予定に入れる
親が倒れるまで頑張ることは支援ではありません。数時間でも家族や支援者に任せ、睡眠、食事、通院、仕事の調整を優先してください。親が落ち着くことは、子どもを放置することではなく、家庭の安全を保つための対応です。
親が「気が狂いそう」「メンタルが崩壊しそう」と感じたら
不登校の対応が長引くと、親も眠れない、涙が止まらない、仕事に集中できない、子どもに強く当たりそうになることがあります。これは「親として弱い」のではなく、負担が一人に集中しているサインです。
次の状態があるときは、子どもの相談とは別に、親自身も医療機関や公的窓口へ相談してください。
- 眠れない、食べられない状態が続く
- 家事や仕事に大きな支障が出ている
- 怒鳴る、物に当たるなど感情を抑えにくい
- 自分や子どもを傷つけそうで怖い
- 消えてしまいたいと感じる
今すぐ自分や子どもを傷つけるおそれがある場合は、同じ空間で我慢せず、家族や周囲に助けを求めて距離を取り、119・110へ連絡してください。子どもへの虐待が心配なときは児童相談所虐待対応ダイヤル「189」、親自身のこころの相談は「こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556」を利用できます。
参考:児童相談所虐待対応ダイヤル189(こども家庭庁)、こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省)
不登校はどこに相談する?目的別の相談先
| 相談したいこと | 主な相談先 |
|---|---|
| 学校での様子、欠席連絡、別室登校 | 担任、学年主任、養護教諭 |
| 子どもの心理面 | スクールカウンセラー、教育相談 |
| 家庭・福祉・関係機関との調整 | スクールソーシャルワーカー |
| 学校外の居場所や学習 | 教育支援センター、フリースクール |
| 頭痛、腹痛、睡眠、気分の不調 | 小児科、児童精神科、精神科、心療内科 |
| 親の疲弊や家族関係 | 自治体の相談窓口、保健センター、医療機関 |
地域ごとの窓口は、不登校に関する地元の相談窓口(文部科学省)から確認できます。47都道府県すべての施設を一度に調べる必要はありません。まず在籍校か自治体の教育相談へ連絡し、地域の選択肢を案内してもらうと負担を減らせます。
不登校と親の責任に関するよくある質問
不登校は母親が原因なのでしょうか?
母親だけが原因とはいえません。不登校には学校、友人関係、学習、心身の状態、発達特性、家庭環境など複数の要因が関係します。母親の関わりに改善できる点があっても、母親一人に責任を負わせるのではなく、父親・学校・支援者を含めて対応を分担する必要があります。
過保護や過干渉だと不登校になりますか?
過保護や過干渉だけで不登校になると断定はできません。ただし、子どもの選択をすべて親が決めたり、失敗を避けるために先回りし続けたりすると、本人の負担や親子の衝突につながる場合があります。生活のすべてを急に任せず、小さな選択から本人に返していきましょう。
ゲームばかりなのも親の管理不足ですか?
ゲーム時間だけで親の責任とは判断できません。ゲームが気分転換や人とのつながりになっていることもあれば、睡眠や生活に支障を与えている場合もあります。取り上げることから始めず、利用時間、睡眠、課金、暴言、食事への影響を確認し、本人とルールを話し合います。
子どもをほっといてもよいですか?
登校を急かさないことと、放置することは異なります。本人のペースを尊重しながら、食事、睡眠、体調、安全を見守り、短い会話や学校・支援先とのつながりを保ちます。自傷や深刻な不調が疑われる場合は、様子見を続けず専門機関へ相談してください。
学校から「家庭の問題」と言われたらどうすればよいですか?
根拠となる事実を確認し、家庭で把握している様子も共有してください。その上で、学校での環境、人間関係、学習、体調を含めて支援計画を作るよう依頼します。文部科学省も、担任だけではなく、保護者、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、関係機関が情報を共有した組織的な支援を重視しています。
まとめ|親を責めるより、親も支援の輪に入る
不登校は、親だけのせいではありません。子どもの心身、学校生活、友人や先生との関係、学習、家庭環境などが複雑に関係します。
家庭での関わりを振り返ることは大切ですが、それは親を裁くためではなく、今後の負担を減らすために行うものです。「誰が悪かったか」ではなく、「子どもは何に困っているか」「家庭と学校で何を変えられるか」「誰に頼れるか」を整理してください。
親も支援する側であると同時に、支援を受けてよい当事者です。一人で抱えず、家族、学校、教育支援センター、医療機関などと役割を分けることから始めましょう。















