不登校の初期、親御さんの心は「どうにかして学校に戻さなければ」という焦りと不安でいっぱいになります。しかし、その真っ直ぐな愛情ゆえの行動が、時にお子様の心をさらに追い詰めてしまうことがあります。
私は小学校教諭の免許を持ち、現在は認定心理士として活動していますが、かつて自分自身も適応障害で「動けなくなった」経験があります。その経験から断言できるのは、不登校の初期対応こそが、その後の回復のスピードを左右するということです。
心理学的な視点に基づいた「不登校初期に避けるべきNG行動」を詳しく解説します。
なぜ不登校の「初期対応」が最も重要なのか?
学校に行けない初めの頃は、お子様の心が「複雑骨折」をしているような状態です。
骨が折れている時に無理に歩かせれば、傷は深まり、一生残る後遺症(トラウマ)になりかねません。初期に正しく「休養」というギプスをつけることができれば、心の回復力は自然と高まっていきます。親御さんの対応一つで、長期化を防ぐことができるのです。
認定心理士が教える、不登校初期の「やってはいけない」3つのNG行動
良かれと思ってやってしまいがちですが、心理学的に見て逆効果になる行動が3つあります。
1. 無理やり理由を聞き出す(問い詰め)
「どうして行けないの?」「何かあったの?」と聞きたくなるのは当然です。しかし、初期のお子様は自分でもなぜ行けないのか言葉にできないことがほとんどです。
心理学ではこれを「防衛本能」の一部として捉えます。理由が分からないのに答えを求められることは、お子様にとって「尋問」と同じ。答えられない自分をさらに責め、親との対話を拒むようになってしまいます。
2. 「明日だけは行こう」という無理な約束(登校刺激)
「明日の1時間目だけ」「給食だけ」といったスモールステップの提案も、初期には慎重になるべきです。
無理な約束をさせ、それが守れなかった時、お子様は「また親を裏切ってしまった」という強烈な自己否定に陥ります。これを繰り返すと、親子の信頼関係が崩れるだけでなく、脳が「フリーズ状態」から抜け出せなくなります。
3. 腫れ物に触れるような過剰な「配慮」と「絶望感」
意外かもしれませんが、親御さんが「私の育て方のせいで……」と泣き暮らしたり、過剰に顔色をうかがうことも、お子様には大きな負担となります。
お子様は親の感情を敏感に察知します。親が絶望している姿を見ると、「自分の存在が親を不幸にしている」という罪悪感で、心のエネルギーが枯渇してしまいます。
NG行動を「OK行動」に変えるための心理学的アプローチ
では、どうすれば良いのでしょうか? 鍵となるのは「安全基地(セキュアベース)」の構築です。
- 「今は休んでいいよ」という明確な許可: まずは「学校へ行かない選択」を認め、お子様が家で心からリラックスできるようにします。
- 勉強よりも「生活基盤」: 勉強の遅れよりも、まずは「しっかり食べて、しっかり寝る」こと。そして、お子様が好きなこと(ゲームや動画など)を否定せずに共に見守ることで、心のエネルギーを溜めていきます。
- 親自身が「自分の人生」を楽しむ: 親が笑っていると、お子様は「自分はここにいてもいいんだ」と安心します。
不登校初期の悩み解決!よくある質問(FAQ)
- Q学校を休ませると、そのままズルズル休んでしまいませんか?
- A
逆です。初期にしっかり休んでエネルギーを溜めた子ほど、動き出す力が早く湧いてきます。無理をさせて心を完全に壊してしまう方が、長期化のリスクが高まります。
- Q勉強の遅れが心配で、つい口出ししてしまいます。
- A
心配ですよね。ですが、心の発達には「順序」があります。まずは情緒の安定(安心感)が土台にあり、その上に「意欲(勉強したい)」が乗ります。土台が崩れている時期は、勉強はお休みして大丈夫です。
- Q学校の先生から「一度顔を見せに来て」と言われましたが?
- A
本人が少しでも嫌がるなら、無理に行かせる必要はありません。先生には「本人の心理的な負荷を考え、今は家庭での休養を優先するよう専門家と相談しています」と伝え、親御さんだけが情報共有のために学校と繋がっておきましょう。
- Q不登校は親の育て方が原因でしょうか?
- A
決してそうではありません。不登校は、学校環境、本人の特性、心身のタイミングなど、複数の要因が重なって起こるものです。自分を責めるのではなく、「これからどう支えるか」に目を向けていきましょう。
最後に:完璧な親を目指さなくていい
不登校の初期、親御さんもまた大きなショックを受けています。まずは、頑張ってきたご自身を労わってください。
「やってはいけないこと」を全て避けるのは難しいかもしれませんが、少しずつ意識を変えていくだけで、お子様との関係は必ず良くなります。
認定心理士として、そして教師を目指した者として、これからもあなたの不安に寄り添っていきます。一人で抱え込まず、一緒に歩んでいきましょう。











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