不登校という状況にあるお子様、そしてそれを見守り、悩み、時には自分を責めてしまっている保護者の方へ。
この記事では、「不登校」という状態を、大人の「適応障害」という視点から紐解いていきます。「なぜうちの子は学校に行けないの?」という問いに対して、精神論ではなく、心理学的なメカニズムに基づいた答えをお届けします。
私は現在、認定心理士として活動していますが、かつて小学校教諭の免許を取得し、社会人になってからは自身も「適応障害」で動けなくなった経験があります。教育現場、心理学、そして当事者。3つの視点から、今一番伝えたいことをまとめました。
不登校は「甘え」ではなく、心身のサイン
朝、学校に行こうとするとお腹が痛くなる、涙が出てくる、あるいは体が鉛のように重くて動かない……。これらは決して「サボり」や「甘え」ではありません。
心理学的な視点で見ると、不登校のお子様の多くは、「学校という特定の環境」に対して、心が適応の限界を超えてしまっている状態にあります。これは大人の世界でいう「適応障害」と非常によく似たメカニズムです。
適応障害とは?
特定のストレス源(学校、職場、人間関係など)が明確にあり、そのストレスによって日常生活に支障が出るほどの心身の反応が起こる状態を指します。
認定心理士が解説:心が動かなくなる「コップの理論」
なぜ、昨日まで行けていた学校に、突然行けなくなるのでしょうか? それを説明するのが心理学の「ストレス脆弱性モデル」です。
人の心を「コップ」、受けているストレスを「水」に例えてみましょう。
- コップの大きさ: 人によって異なります(性格、体質、これまでの経験など)。
- 注がれる水: 勉強、友人関係、先生との相性、音や光の刺激、将来への不安。
水が少しずつ溜まり、ついにコップの縁から溢れ出したとき、人は「動けなく」なります。これが不登校や適応障害の正体です。溢れた水を「気合」でコップに戻すことはできません。まずは、水を注ぐのを止め、溜まった水を少しずつ抜いていく作業が必要なのです。
実体験から語る:適応障害と不登校の「しんどさ」
私は大手メーカーに勤務していた頃、適応障害になりました。 「仕事に行かなければならない」と頭では分かっているのに、玄関で靴が履けない。駅のホームで電車に乗るのが怖くてたまらない。そんな経験をしました。
不登校のお子様も、同じような感覚でいることが少なくありません。
- 「みんなができていることが、なぜ自分だけできないのか」という自責の念。
- 「明日は行けるかも」という期待と、それが裏切られる絶望感。
この「頭(理屈)」と「体(反応)」がバラバラになってしまう感覚こそが、最も辛い部分です。お子様が家で元気そうに見えるのは、そこが「ストレス源(学校)」から離れた、唯一の安全な場所だからなのです。
回復のために必要な3つのステップ
もし、お子様やご自身が今「動けない」状態にあるなら、以下のステップを意識してみてください。
- 「逃げ」ではなく「避難」と捉える:嵐の日に外に出るのは危険です。学校へ行かないことは、自分を守るための正当な「避難」です。まずは「今は休んでいいんだ」という安心感を作ることが最優先です。
- 心のエネルギーを溜める(完全休養):コップの水を抜くためには、何もしない時間が必要です。好きなゲームをしたり、寝て過ごしたりすることも、実は大切な「回復作業」です。
- 「学校復帰」だけをゴールにしない:適応障害の回復には、環境調整が不可欠です。学校に戻るのか、フリースクールを探すのか、あるいは通信制という選択肢をとるのか。お子様に合う「コップのサイズに合った環境」を一緒に探していきましょう。
よくある質問(FAQ)
- Q不登校と適応障害は、何が違うのでしょうか?
- A
不登校は「現象」を指し、適応障害は「診断名」です。呼び方は違えど、「特定の環境が強烈な負荷になっている」という本質は同じです。
- Q家ではスマホばかりしています。これも適応障害の一部ですか?
- A
現実の辛さから一時的に意識を逸らす「回避行動」であることが多いです。無理に取り上げるより、「それだけ現実が辛いんだね」と理解を示す方が、回復は早まります。
- Q親として何ができるでしょうか?
- A
最も大切なのは、親御さん自身が心に余裕を持つことです。親が不安だと、子供はそれを敏感に察知し、さらに自分を追い詰めてしまいます。
最後に:あなたは一人ではありません
不登校も適応障害も、人生の「失敗」ではありません。 むしろ、「自分に合わない環境を教えてくれた、心の防衛反応」だと考えてみてください。
小学校教諭として多くのお子様を見てきた経験、そして自分自身が適応障害で立ち止まった経験から言えるのは、「回り道をしても、必ず自分らしい生き方は見つかる」ということです。
少しでも心が軽くなるお手伝いができれば幸いです。もし一人で抱えきれないときは、いつでもお話を聞かせてくださいね。







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