「不登校はずるい」という言葉。それは、言われた本人だけでなく、そう感じてしまう周囲の「苦しさ」のサインでもあります。
本記事では、不登校が「楽」に見えてしまう心理的背景と、本人を追い詰めず、周囲の不満も解消するための具体的な声掛けを解説します。
結論から言えば、「ずるい」という感情を否定せず、それぞれの「頑張り」を個別に認めることが解決の第一歩です。
なぜ「不登校はずるい」という感情が生まれるのか?
「ずるい」という言葉の裏には、言った本人の抱える悩みや、社会全体に根付いた固定観念が隠れています。
1. 「学校は我慢して行くもの」という同調圧力と教育観
多くの子どもや大人は、「嫌なことがあっても学校に行くのが当たり前」という価値観の中で生活しています。毎日必死に登校し、勉強や人間関係のストレスに耐えている子にとって、学校に行かない選択をした子は、ルールを無視して特権を得ているように見えてしまうのです。
2. 目に見えない苦しみへの理解不足
不登校の理由は、いじめのような明確なものだけではありません。言葉にできない強い不安や、起立性調節障害などの体調不良、過剰な適応によるエネルギー切れなど、外からは見えにくい背景があります。この「見えない苦しみ」が共有されないことで、「ただサボっているだけ」という誤解が生まれます。
3. 周囲の注目や支援への嫉妬
先生が不登校の子を気にかけて家庭訪問をしたり、親がつきっきりで対応したりする様子を見て、周囲の子が「自分ももっと注目してほしい、優しくしてほしい」という不満を「ずるい」という言葉に込めるケースもあります。
文部科学省も明言。「不登校は問題行動ではない」という共通認識
かつては「学校には何が何でも行くべきもの」という考えが主流でしたが、現在は国の方針も大きく変わっています。文部科学省は2016年に施行された「教育機会確保法」などを通じ、不登校は決して「問題行動」ではないという見解を明確に示しています。
- 休養の必要性: 状況によっては、無理に登校させるのではなく、まずは心身を休ませることが最優先である。
- 学校以外の学び: 学校以外の場所(フリースクールやICTを活用した学習など)での学びも、適切に評価されるべきである。
つまり、不登校という選択は「わがまま」や「サボり」ではなく、子どもが自分を守り、生きるために必要な「権利」として認められています。周囲の「ずるい」という声は、こうした新しい共通認識がまだ社会全体に浸透しきっていないために起こる「古い価値観との摩擦」とも言えるのです。
【本人視点】「ずるい」の言葉に傷つく不登校児の本当の心理と罪悪感
周囲から「ずるい」と思われている一方で、本人は決して「楽」をしているわけではありません。
- 休息であって遊びではない: 本人にとって家は「避難所」です。常に「学校に行けない自分」への罪悪感や、社会から取り残される恐怖と戦っています。
- 将来への強い不安: 勉強の遅れや進路の選択など、同年代の子とは異なる重い課題を一人で抱えています。
- 周囲の視線に怯える: 「ずるい」という周囲の言葉は、本人の自己肯定感を大きく削り、さらなる引きこもりを招く原因にもなります。

不登校は決して「楽な道」を選んだのではなく、心を守るために「その道しか選べなかった」という切実な背景があることを、まずは大人が理解する必要があります。
先生や親が知っておきたい「ずるい」への対応策
周囲から「ずるい」という声が上がったとき、どのように対応すべきでしょうか。
1. 「ずるい」と言った子の気持ちを受け止める
まずは「あなたも毎日学校に行って、本当によく頑張っているよね。だから羨ましく思っちゃうんだね」と、相手の努力を肯定しましょう。『ずるい』という言葉が出るのは、その子がそれだけ一生懸命にルールを守り、自分を律して頑張っている証拠でもあります。否定せずに受け止めることで、その子の攻撃的な気持ちが和らぎます。
2. 「平等」ではなく「公正」な支援を説明する
「目が悪い子がメガネをかけるように、今は心のエネルギーを貯めるために休みが必要な時期なんだよ」と例え話を用いて説明しましょう。全員が同じことをするのが平等ではなく、一人ひとりに必要な支援をすることが大切であるという考え方を伝えます。
3. 家庭内でのコミュニケーション
兄弟間で「ずるい」が出る場合は、不登校の子だけでなく、登校している子のケアも重点的に行いましょう。特定の誰かだけが特別なのではなく、家族全員が大切な存在であることを言葉で伝え続けることが重要です。
4. もし子どもが直接「ずるい」と言われて傷ついてしまったら?
もし子どもが友達や兄弟から直接「ずるい」と言われてショックを受けていたら、まずはその痛みに寄り添い、親が「言葉の翻訳」をしてあげましょう。
「『ずるい』って言われて悲しかったね。でも、それはあなたが悪いわけじゃないんだよ。あの子も毎日一生懸命頑張っていて、少し疲れちゃっているから、休んでいるあなたが羨ましく見えたのかもしれないね」
このように、「相手の言葉は、相手自身の余裕のなさが言わせたもの」だと伝えてあげてください。
「ずるい」という言葉のナイフをそのまま受け取らせるのではなく、親がフィルターとなって「相手もいっぱいいっぱいなんだね」と視点を変えてあげること。そうすることで、子どもの自己肯定感が過度に削られるのを防ぎ、家を本当の意味での安心できる居場所にすることができます。
不登校期間中の学びと社会とのつながり
学校に行かないことが、そのまま学びの停止を意味するわけではありません。
| 選択肢 | メリット |
|---|---|
| フリースクール | 同じ悩みを持つ仲間と出会い、社会性を育める |
| オンライン学習 | 自分のペースで勉強を進め、出席扱いにできる場合も |
| 地域の支援センター | 専門家に相談しながら、少しずつ社会との接点を作れる |
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FAQ:不登校の「ずるい」に関するよくある質問
- Q兄弟が「あの子だけ学校に行かなくてずるい」と言います。どう答えるのが正解?
- A
まずは「ずるい」と言った子の頑張りを認めましょう。そして「あの子は今、心のエネルギーが空っぽになって動けない状態なんだ。無理に動くと余計に長引くから、今はガソリンを溜めている時期なんだよ」と、必要性を丁寧に説明してください。
- Q家でゲームばかりしているのを見ると、親も「ずるい(楽をしている)」と思ってしまいます。
- A
親御さんも人間ですから、そう思うのは自然なことです。ただ、子どものゲームは現実の辛さを忘れるための「防衛本能」であることも多いです。まずは親自身の心のケアを優先し、専門機関に相談して肩の荷を下ろすことが大切です。
- Qクラスの子に「ずるい」と言われない工夫はありますか?
- A
先生と連携し、「あの子は今、お家で特別なカリキュラムで学んでいるんだよ」など、本人がただ遊んでいるのではないことを、クラスの理解度に合わせて伝えてもらうのが有効です。
- Q学校に行かないと、将来社会に出られなくなりますか?
- A
学校以外にも学びの場はたくさんあります。無理に登校させて心を壊すよりも、まずは家を安心できる場所にし、エネルギーが溜まってから本人の興味に合った「外とのつながり」を支援していくことが、自立への近道です。
まとめ:理解と共感で「ずるい」の壁を乗り越える
「不登校はずるい」という言葉は、言った側も言われた側も、そして見守る大人も傷つく言葉です。しかし、その背景にある誤解を解き、一人ひとりに合った学びや支援の形を模索することで、少しずつ前を向くことができます。
大切なのは、周囲の視線に惑わされず、目の前の子どもが今何を必要としているかを見極めることです。家庭だけで抱え込まず、先生や専門機関を頼りながら、多様な選択を認めていきましょう。





